博士の日記

医薬系民間企業の研究員を経て、外資系企業でマーケティング職をやっているバイオ系博士が日々を語ります。

アカデミア(博士学生・ポスドク)からの民間企業への就職・転職を考えるときに考えること(1)

私のバックボーンはバイオ・生命科学の領域です。

もう少し具体的にいうと、タンパク質の機能・構造解析や、環境中の微生物の生理生態解析、菌叢解析などです。

それらが近からずとも遠からず関連している産業領域というのは、製薬、ヘルスケア、検査、化成品、試薬、エネルギー、食品、ITなどが挙げられると思います。

今現在学生のみなさんは、自分の専門的能力がどのような産業で役立てることができるか想像したことがありますか?企業就職を志望しているなら、今の段階からきちんとイメージしておきましょう。

同時に、企業や会社組織ということについて、詳しく学習しておくと良いと思います。よく業界研究や企業研究なんて就活のときにいいますが、いざ社会人になってみるとそういった取り組みがいかに表面的なものだったかよくわかります。学生からすると十分にわかったつもりでいたのかもしれませんが(私もそうでした)、企業の面接担当者などからすると、何もわかっていないと思われていたに等しいと思います。それでもちょっと調べてきた風のことを言えると、評価が得られたりしていたのかと思います。

ただ、学生のみなさんは(多くの場合)当然会社で働いたこともないわけで、知らなくて当然です。わかならくても当然です。本やネットでイメージを膨らますしか方法がないわけなので。その中でも研究職の実像にせまった記事はあまりないのかな~と思い、少しでも情報提供できればと思ったのが、そもそものこのブログを始めたきっかけでもあります。

 

昨今、基礎研究成果を社会に還元できるようなテーマに多くの研究予算が投下されています。実用化をイメージできていないと、予算がとりにくいのだとか。

医学系の研究をしているアカデミアの研究室なら、よく「~の治療法の開発」や「新規薬剤標的の同定」みたいな基礎研究の成果が発表されていますよね。

化学系なら、薬剤分子の合成方法も研究テーマになるかもしれません。抗体やタンパク質分子の研究をしているところなら、「特異的抗体を用いた~分子の検出」みたいなテーマで、検査・診断への応用を目指しているところもあるかもしれません。

私も学生として大学にいたとき、実用化そのものを指向した研究まではする必要はないが、どのような形で社会に役立てることができるのかをきちんと説明できるようにしておくこと、というような指導はたびたび受けていました。学会発表などで、イントロダクションに盛り込んだりすることもよくありました。国際誌に論文を投稿するときにも、カバーレターで社会的インパクトを伝えるとEditorの受けがよかった印象があります(基礎研究でも説明不要なインパクト大なテーマなら不要かもしれませんが)。

 

基礎研究なんだから、そういったことを考える必要もないという意見も存在しますし、それ自体は否定しません。

ただ、研究者も社会の中で生きています。社会の中で自分の立ち位置を確立しようと思うと、やはり他とのつながりが必要ではないでしょうか?「他とのつながり」というのが、社会にどう役立つかということに他ならないと思います。

 

話が脱線しましたが、自分の研究(予算獲得の場合など)、もしくは自分自身そのもの(就転職の場合)の価値を売り込むとき、もしくはこれから自分が希望する業界へ参入してみようと思ったとき、その業界のことをどの程度調べますか?

私は、学生のときは食品や医療にやや関わるテーマでしたので、実用化があるとすればそういった分野が考えられました。ただ、その分野(業界)で、こういった形で応用できるなどとよく説明したりしていましたが、明確な事業プランなど考えてもいませんでした。企業に転職してきてから、この視点が決定的に重要なことに気付きました。

(続く)